がん保険 比較の新サービス開始

商売には原則がある。
等価交換という原則だ。
たとえば、100円ショップで買ったものがすぐに壊れたとしたら、あなたはわざわざお店まで文句をいいに行ったりするだろうか?
おそらく、「100円だからいいや」と思ってあきらめるはずだ。
しかし、これが100円ではなく、数万円のものだったらどうだろうか?
「数万円もしたのになんで」と、すぐにお店に駆け込むはずだ。
この「100円だから」「数万円もしたのに」というところに、商売の原則が見え隠れする。
つまり、自分が支払うお金に見合う商品を見極めて、私たちはお金を払うということだ。
だから、同じように「買ってすぐに壊れた」としても、反応がまるで違ってくる。
この、「同じくらいの価値があるモノ(現金や商品・サービス)同士を交換する」というあたりまえの原則を無視すると、商売はうまくいかない。
話を戻すと、高級フランス料理店のお客さんも、値段に見合うかどうかの見極めを欠かさない。
値段が高い分、よりシビアになる。
だから、有名シェフがいるとか、夜景が綺麗だとか、とにかく味が評判だとかいったお店に人気が集まる。
そして、そういったお店はだいたい都心にあるし、そもそも都心までわざわざ食べに行くという行為自体も、イベントとして価値がある。
だから、ベッドタウンにある高級フランス料理のお店は、まるで銀座にある100円ショップのように、商売の原則を明らかに無視した商売をしているといえる。
それなのにそういったお店が何年もつづいているとなると、かなりの違和感があるのだ。
あまりにも不思議だから行ってみたある日、私はついに意を決して、この謎の高級フランス料理店に足を運んでみた。
しかもランチではない。
ディナーだ。
数万円もかけてこの謎解きをするのだと思うと、まったく負けたみたいで悔しかったが、会計士としてこのお店の商売形態は無視できなかったのだ。
店に入ってみると、お客はひとりもいなかった。
時間が早いせいだろうかと思いつつ店内を見まわすと、意外にも内装が凝っている。
高い天井、ガラス越しのオープンキッチン、ズラリと並ぶワインボトル、そしてゆらりと揺らめくキャンドルの灯り。
ピカピカに磨かれた床をコツコツと歩きながら、「これでは維持費もたいへんだ」と他人事ながら不安が募る。
肝心の料理のほうは、全品有機野菜を使用しているとかでたしかに美味しかった。
だが、「絶品!星3つ!」と人に宣伝してまわるほどでもない。
謎を解明しにきてますます謎を深めてしまった私が、「もしかしてこのお店は趣味でやっているのか」と思いはじめた頃、ふたり組のお客さんがやってきた。
横目でチラチラ見ていると、その主婦と思しきふたり組は、なぜかやたらにソムリエと仲がいい。
「知り合いかな?」と恩いつつ食事の合間にトイレに立つと、なんとトイレの壁に、すべての疑問を一瞬で吹き飛ばす「答え」があったのである。
「高級」なのには理由があった謎はすべて解けた。
フランス料理教室もワイン教室も、毎月1回で月謝は約1万円。
これなら習い事としてはちょっと高い程度で、生徒は集まりそうだ。
水曜が開講日で定買はそれぞれ10名。
フランス料理が2教室、ワインも2教室で、つまりお店側からしてみれば毎週開講していることになる。
そこで単純に計算すると、10(人)×4(教室)×1万(円)で、月額40万円となる。
また、入会金も1万5000円を取っていたから、10(人)×4(教室)×1万5000(円)で、60万円。
この入会金というものは経費がまったくかからないため、60万円全額がそのまま利益になる。
これなら商売として十分に成り立ちそうだ。
しかも、こういった教室のターゲットは、昼間に時間の取れる主婦層がメインだから、教室は昼過ぎから夕方に開けばいいわけで、フランス料理店の本業であるランチやディナーの時間にかぶらない。
さらに、教室はお店を使えばいいわけだから場所代はとりあえずかからないし、おまけに講師はお店のシェフにソムリエだから人件費も安く上がる。
もちろん、教室に通ってもらうことでお店のファンも作れるし、生徒やその知り合いがディナーを食べにくることも期待できる。
そう考えると、さっきのふたり組はおそらくここの生徒のはずだ。
ソムリエと仲がよかったのもうなずける。
生徒は近所の住民が多くなるはずだから、そんなに交通の便を考える必要もなく、駅や商店街から離れた住宅地でもまったく問題ないというわけだ。
そしてさらにいうなら、ここでは「高級」というところがポイントになってくる。
ヘタに安いお店の人に習うより、高級なお店の人から習ったほうがお得感があるし箔がつく。
だから、わざわざ格安フランス料理のお店にする必要はなく、価格帯は高くてもいい。
つまりこのお店は、都心にある評判のフランス料理店などとはまったく違った商売のカラクリを持っていたのである。
本業のフランス料理店と、副業の料理・ワイン教室。
飲食業にサービス業と一見まったく別の商売形態に思えるが、これらをつなげて考えているところにこのお店が存続しえている(ゴーイング・コンサーンしている)秘密がある。
つまり、なにも本業だけで儲ける必要はなく、副業など他のところでちゃんと利益を上げることができれば商売は成り立ちますよということだ。
しかし、いくら副業がおいしいからといって、本業をやめて副業だけに絞ってしまっては本末転倒になってしまう。
料理教室やワイン教室だけしか商売にしなかったなら、おそらくこのお店は潰れてしまっていたはずだ。
なぜなら、この場合、「高級フランス料理店のシェフ(ソムリエ)が教える」というところに、お金を払う価値があるからだ。
ここからいえることは、本業と副業はバラバラになっていてはいけない、お互いをつなげて考えろということだ。
本業があるから副業が成り立ち、また逆に、副業があるから本業が成り立つ。
これらが密接にリンクし合ってこそ、相乗効果が生まれるのである。
これが、本業のフランス料理店だけではやっていけないから、土日だけラーメン屋をやろうとか、お店にピアノがあるから平日はピアノ教室もやろうとか、いかにもバラバラのことをやってしまっては、もうどうにも立ち行かなくなる。
両方ともダメになってしまうのは目に見えている。
そして、この本業と副業をつなげる経営の考え方は、会計でいうならば、「連結経営」という考え方なのである。
うまくいっている企業は連結をしている連結というと、よく連結決算という言葉を聞くが、ここでは連結経営について、それも「本業に密接にかかわる副業を行うこと」について考えていきたい。
たとえば、鉄道会社はむかしからその沿線に住宅地を作ったり、遊園地を作ったりして、自分の鉄道の利用者を増やそうとしているが、これはまさに連結経営の考え方だといえる。
東急や小田急、名鉄、阪急、西鉄など全国の私鉄が路線の終点に百貨店を置いているのは、家族連れの運賃を期待しているからである。
楽天やライブドアといったインターネット企業が、証券会社を買収してそれに力を入れている。
その理由は、ネットによる株取引が盛んだから儲けが得られそうだ、というだけではなく、ネット投資家が本業である自社サイトを利用してくれるかもしれない、という相乗効果を期待しているからである。
ソニーが音楽事業や映画事業を行っているのも、CDコンポやテレビ・DVDプレ新日鉄の子会社には、新日鉄ソリューションズという、特に金融機関や官公庁向けに強い大手システム会社がある。
「鉄」と「システム」では一見なんの関係もないように見える。
が、実は新日鉄には、鉄から発生した高度なIT技術があるのだ。
鉄を作るためには、原料を高炉のなかで数千度という高温に溶かす。
その管理は、まさか高炉のなかを覗くわけにもいかないからたいへんで、むかしは職人の勘でやっていたのだが、いまでは高度なシステムが代わりをしている。
おまけに高炉は、一度火をつけると何年も24時間年中無休で動きつづけるので、そのシステムの信頼性は非常に高くなければならない。
この鉄で培われた技術は、もっとも信頼性が高くなければならない金融機関や官公庁のシステム管理と通じるところがある、というわけだ。

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